さきはやすみます

やすみたいが口癖

2週間だけ一緒に働いた上司が、人生の最後に教えてくれた忘れてはいけない3つのこと

      2017/07/06

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最初で最後の上司、藤岡さん。

私はきちんと会社員として働いていたことがないので、「仕事」というものについて、誰かに教わったことがほとんどありません。

でも、ほんの少しの期間ですが、1人だけ上司と呼べる存在の人がいたことがありました。大学卒業後すぐ、ダンス教室勤務のプロダンサーという特殊な進路を選んで、あっさりと挫折、悩んだ末に辞めてダンスドレスのデザイナーになろう!と決意してドレスメーカーに勤めはじめた、その最初の2週間です。

その人は、藤岡さんといいます。

当時還暦の、でっかいおにぎりみたいな顔と体型のおじさんでした。

 

藤岡さんは新卒でアパレルの大企業に勤め、ずっとアパレル関係の会社で何回か転職し最後は大手の役員をやり、いろいろあって早期退職。さてこれからどうしようか…と思っているところに当時の会社の社長に出会い、意気投合し、大企業から社員数40人弱の零細企業に転職した、というキャリアの方です。

私が入社した時は、大阪が拠点だった会社が東京に支店を作り、これから本格的に東京進出!というタイミング。彼はベテランとしてその新規出店を取り仕切るために東京店にいました。

「仕事についてはこの人に全部教わったらいいから」と言われて、それから毎日マンツーマンで仕事を教わりました。

 

一度プロダンサーという道を選び、そこでまったく何も出来ないまま挫折した私は、新卒で社会人になった同期たちに置いて行かれてしまった気分でした。自分にはまったく社会で必要とされるような価値を生み出す力がないことに、心の底から焦っていた。何でもいいから、仕事をしたい。役に立つ人間になりたい。そういう願望を強く持っていました。なのでここで彼に出会えたことは、とてもラッキーだったと思います。

一緒に働いたのは本当に短い時間でしたが、その時に教わったことが、いまだに自分の今の仕事の仕方や生き方に影響を与え続けているのです。

 

①お客さんに損をさせない

彼に教わった大事にしていることの1つ目は、「絶対にお客さんに損をさせない」ということです。

 

 

”ええか、ぜったいにお客さんには損をさせたらあかんで。多少自分らが損したとしても、ちゃんとお客さんのこと考えてやっとったらまわりまわって返ってくるからな。逆に、自分らの利益のためとか、めんどくさいとか、そういう理由でお客さんが損することをすると、その時はわからなくてもいずれ返ってくるで。”

 

 

こんな感じで口をすっぱくして言われていたのが、「損をさせない」という言葉でした。

 

この言葉が今の私の仕事で迷った時の判断基準になっています。

ものを作る仕事をしていると、予算とクオリティの間で悩むことが多くあります。

お金をかけていいものを使い、手間ひまかけて作った方が、基本的には良くなります。でもあまりに予算や時間をかけすぎても採算が取れず、そのバランスが崩れては事業を続けることが不可能になってしまいます。個人でやっていると、どうしてもその時々の懐事情だったり、注文の多少で気持ちがブレて、それが油断すると出来上がるものに影響するな、と2年近くやっていてわかってきました。

「もう少しここを直したら良くなるけど、時間もないし大変だな…」

「こっちの材料じゃなくてこっちにしたら原価が抑えられるな…」

「少し高いけど、このくらいの額をもらってもいいかな…」

 

ちょっと油断すると、こういう考えが頭をよぎることもあります。人間ですから、自分に不安があると弱い方の気持ちに引っ張られそうになるんですよね。

でも、そうやって迷った時に「これはお客さんにとって損にならないか?」と考えることにしています。

自分の利益を考えてお客さんに損を押し付けていないか?

提供するものは、払った値段以上の価値があると思ってもらえるか?

その答えがYESでない限り、どんなに大変でもYESになるまでやろう、と決めました。

 

もちろん言われた予算ではどうしてもできないことなど、お断りする場面もありますが、基本的にはそのお客さんの提示した条件内で最も良いものにしよう、という気持ちで仕事をしたいと思っています。

最低限事業を続けるために守らなければならないラインはキープしつつ、お客さんが「ここに頼んですごく得した!!」と思ってくれるように。そうしていれば、一時的な自分の損はまわりまわって素敵なご縁となって返ってくる。その藤岡さんの言葉を信じています。

 

②約束を守る

2つ目は、「お客さんとの約束を必ず守る」ということ。

 

”やると言ったことはきちんとやる。やれない約束はしない。もし約束してからできないとわかったら、なるべく早く伝えて謝る。そしてもう一度守れる約束をする。

これだけのことをやっていれば、信頼してもらえる、信頼が会社の利益や発展につながるんや。”

 

これについては、本当に言葉にすると当たり前のことなんですけど、いまだに自分がなかなか完璧にはできていないなぁと反省することばかり、だったりします。

どうしても、かつかつのスケジュールでも急ぎの仕事を頼まれたら断れなかったり、そのせいで全ての作業が押せ押せになりいろんな人に謝って日程を変更してもらうことになったり、このあたりの管理がまだまだ上手くできません。

個人事業は自由な分、自分のプライベートな時間と仕事の時間の区別がはっきりあるわけではないので、自己管理が必要。もともときっちりしているとは言えない性格の私にはなかなか難易度の高いものでした。

今も、毎日の仕事に忙殺されてひとつひとつの小さな約束を忘れそうな時…この言葉を思い出して、努力して行きたいと思っています。

 

③明日自分は生きていないかもしれない

 

そして最後の3つ目は、「人はいつどうなるかわからない」ということ。

 

 

私が入社したのは2013年1月。ちょうど店舗で初めての新年のセールを企画していて、その準備をみんなでやっていました。

ぐちゃぐちゃだった事務所兼倉庫の状態だった店舗の2階をセール会場にするために片付けたり、手作りのDMを作って顧客リストに送ったり、その顧客リストがわけわからない状態だったのを整理したり、続々届く新着のドレスをきれいにディスプレイしたり、注文や会計の処理方法を考えたり(新店だったから本店とどうやりとりするかちゃんと決まってなかったのです)、とにかくやることがたくさんありました。

私は毎日初めてやること、まったく知らないことばかり。店舗にあるドレスをいったいいくらで売ればいいのかすらわからないのに、1人で店頭に立つこともありました。

そんな東京店をなんとか形にしようと、藤岡さんは毎日毎日遅くまで残って働いていました。

その年の冬はとても寒くて、セールの3日前に大雪が振り、それが玄関の屋根に積もって屋根が落ちてドアが開かなくなり、藤岡さんから夜中に「閉じ込められた!!」というヘルプの連絡が来たりしたことも。

そんなドタバタの状態で、入社したてで何にもわからない私までしっかり戦力に数えられた状態でセールがスタート。てんやわんやしながらもやりながら仕事を覚えていって、なんとか3日間のセールを終え、東京店として過去最高の売り上げをあげることができました。

達成した売り上げを本社に報告して、メンバーみんなで喜びました。藤岡さんもとっても嬉しそうでした。

 

 

そしてその数日後。

突然、藤岡さんは亡くなりました。

 

 

その日、私は1人でお店に残っていて、セールの後片付けをしていました。

藤岡さんは調子が悪くてお休み、ということを朝聞いていましたが、ずっと休みなく出勤していたから疲れてたんだろうなーくらいに思っていました。

前日は普通に一緒に仕事をして、普通にお昼を一緒に食べて、これから東京店であれをしよう、こうしたい、という話しをしていました。私が帰ろうとした時も、いつもと同じようにパソコンに向かって作業をしながら、おつかれさま、と言っていました。

そしてそれが私が藤岡さんから聞いた最後の言葉になりました。

 

朝調子が悪いといって病院に行ったあと、その場で倒れ、そのまま夜に亡くなったということでした。

先輩から電話で知らされてしばらく本当かどうか信じられず、とりあえずお店を閉めて出てきたもののすぐに帰る気になれなくて、近くのカフェでしばらく呆然としていたのを覚えています。

 

一緒に働いてたったの2週間。

まだまだ60代、亡くなるには若すぎる年齢でした。

もっと教えてほしいことがたくさんあったのに。半年後、1年後にはこうなっていよう、と目標を語っていたのに。

それでも、藤岡さんは急にいなくなってしまいました。

 

新人で社会経験もないくせに、やたら自己主張が強くて自分が納得するまで動けない性格の私は、藤岡さんに教わりながらしょっちゅう「でも、〜じゃないんですか??」と口答えして、「もうお前は『でも』は禁止や!とにかく1年は俺の言う通りにやってみろ!自分で考えるのはそのあとや!!」と怒られていました。

いろんな新しいことを覚えるのは面白くて、そういうやりとりすらも、私は楽しかった。

あとから、藤岡さんの奥様にお会いした時、「新しく入ってきた奴は生意気だけど優秀で教えがいがあって楽しみだ」と嬉しそうに話していたことを聞かされました。

彼の人生の最後に、一番多くの時間を過ごした人間になってしまったことに、なんだか責任感を感じていたけれど、彼も楽しんでくれていたらしいことは救いでした。

 

きっと、こんなタイミングで自分が死ぬことになるなんて、藤岡さんはこれっぽっちも思っていなかったでしょう。

 

 

『もしかしたら、明日自分は生きていないかもしれない。それでも後悔しない毎日を送っていかなければ…』

 

そう、強烈に心に刻んだ出来事でした。

 

 

さて、藤岡さんがいなくなって教えてくれる人を失ってしまった私。

本当なら東京店に新たな助っ人が来てもいいようなものですが、そこは零細企業、そんな人員も予算の余裕もありません。

そして入社2週間の私が、どういうわけか東京店の責任者のようになってしまい、よりいっそうはちゃめちゃな仕事生活が始まりました。

でも、そんな無茶な経験のおかげで、急速に自分でやっていく自信をつけてしまった私は、更に半年後にはまた無謀にもさっさと独立しよう、という発想に至るのですが、そうやって決めるまでにも藤岡さんの突然の死は大きな影響を与えていたと思います。

 

どうしてもやりたいことは、今やらなければ。私には、もしかしたら明日はないかもしれない。

 

そういう恐怖感が、ずっと心の奥にあるのです。

今、死んでしまったらどうしよう?と今もたまに、すごく怖くなることがあります。

 

あれもこれも、やってみたいことがたくさんある。そしてそれを実現させるための時間は、決して無限にあるわけじゃない。

毎日を平凡に生きていると忘れてしまうこの当たり前の事実を、最後に教えてくれた藤岡さんに本当に感謝しています。

 

やりたいことを今すぐやってみて、もし失敗して傷つくことがあっても、死んでしまうことに比べれば全然たいしたことないですよね。それに、どんなに失敗したり傷ついたとしても、結局最後には死んでしまうしかないのです。

そう思うと、周囲の人にはちょっと突拍子もなく無謀に見える決断も、自分の中では必然的なものになります。

 

私はそうやって選んできた自分の今の人生に、何一つ後悔をしていないし、これからの人生に本当にワクワクしています。

 

生きているって楽しい。人生って素晴らしい。

歳を重ねるにつれて、どんどんそんな気持ちが増して行っている気がします。

 

 

人生の一番最後に、私にそれを教えてくれた藤岡さん。

今、結局私は、自分ひとりで考えて自分勝手にやりたいことをやっていて、あの頃話していた理想を実現させてあげたりは出来なかったけれど。最初で最後の上司であるあなたの教えはずっと大事にしていきます。

いつか、なかなかお前もやるな!と褒めてもらえるように、頑張りますね。

 

ではでは、早でした。

 

 

 

 

 

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