さきはやすみます

やすみたいが口癖

私はドレスそのものではなく、「ダンサーとして、素敵な自分になる」という体験を売っている

      2017/07/06

※こちらはnoteというサービスに書いたものです。つらつらと日記を書いてる早のnoteはこちらから>>note | 早 《saki》

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自営業としてダンスドレス屋さんを始めて気づけば2年以上経っていました。

1番最初は、大学2年生の時。

練習用に売っていた3000円の黒いズボンを、さらに半額にまけてもらって買ってきたものに、ファスナーを付け、フリンジ(ひも状の飾りです)を縫い付け、レースとストーンで装飾して、とりあえず着れるようにしてみた、というのが始まりでした。

何一つ洋裁の知識もなくて、あったものは家庭用ミシンとヤフオクで1000円で買ったマネキン。そしてこういうものを着て踊りたいんだ!という理想像、それだけ

よくまあ、ここまで出来るようになったなぁ、と思います。ほんと。何にも知らなかったから、当時は怖くなかったけど、今だったら怖くて独立なんてできないかもしれません。

おかげさまで、今も営業らしい営業は一切せずに、ありがたいことにお客様に恵まれて、私のドレスをぜひ着たい!という人のために仕事ができています。ここまで来るために多くの人に助けてもらい、応援してもらいました。

だけど、実は自分自身でも、なぜここまで途切れずにお仕事がもらえてきたのか、一体お客さんが何に価値を感じてくれているのか、何となくわからなくてずっとずっと不安だったんです。

今は運がいいだけで、このままいけるはずがない…。

って常に思ってきました。

なんですけど、最近ちょっとだけなんですが、あ、こういうことが大事なのかな、ってことに気づいてきたのでそれを書きます。

「完成度」の高いものなら、他にいくらでもあるけれど。

私は、ドレス屋さんをやっているけど、洋裁の専門学校を出ていません。おそらく、学校での勉強をせずにこういう仕事をしている人は、そう世の中に多くないように思います。

当然のことながら、ダンスのドレスに求められる知識や技術は、自分で必死に勉強しました。ほぼ全て、独学でやってきました。

頭の中のドレスのイメージを実現するために、方法がわからなければ教科書を買って読んで、ドレスのお店に行ってこっそり裏をめくって観察し、それでもダメなら誰かに聞いて、やってみて試して、失敗して、直して、また失敗して…そういう地道な研究の結果、だんだんと自分の思い通りに作れるようになっていきました。

それでも、きちんと洋裁の勉強をした人から見たら、不十分なところはあると思います。私よりも綺麗な縫製で、お洋服として完成度の高いものを作れる人は、他にいくらでもいるでしょう。

一時期、それが不安で仕方がない時もありました。やっぱりちゃんと学校に通わなければダメかもしれない。綺麗に縫えること、洋服としての完成度が高いこと、そっちを追求しないといけないんじゃないか?と思っていました。

欲しいのはドレスじゃなくて、素敵な自分自身。

でも今は、それはもちろん大事だし今後もレベルを上げていけるように常に勉強を続けていくのは当然なのですが、私が1番に追求するべきはそこじゃないな、と思っています。

作りがしっかりしたドレスなら他にいくらでもあるのに、それでも私のドレスを着たいと選んでくれる人は、一体何に価値を感じてくれているのでしょう。

私はずっと、ダンスのドレスを売っている、と思っていたけど、お客さんは「ダンサーとして素敵になった自分」というドレスを手に入れたその先の”体験”そのものを買ってくれているのだ、とある時気付いたのです。

私はもともと、ダンサーです。

今も、自分の作ったドレスを着て競技会で踊る現役の競技ダンサーです。

自分がフロアに立つ時に、こういう風になりたい、こういうドレスでこう着こなしたら絶対に素敵になる。そういう明確な理想のイメージを持っています。それを実現するために、他のものでは物足りなくて、自分でドレスを作り始めました。

お客さんも、求めるものは同じなのだということ。ただただ綺麗なドレスが欲しいわけではありません。それを着た素敵なダンサーになった自分、が欲しいのです。

2年近く休んでいたダンスを自分が再び踊るようになって、はっきりとそれがわかりました。踊る人が欲しいのは、あくまで踊り手として魅力的な自分であって、ドレスそのものではないのですよね。だって私自身が、そうだもん。

それならば、私は私の全感性を総動員して、その人が「ダンサーとして最も魅力的になること」をプロデュースする

それが私の提供できる価値なんだ、とわかりました。

ドレスを作る、というのはあくまでそのための手段でしかないし、それが本人を魅力的に見せないものでは意味がないのです。技術を身につけるのも、上質な素材を探し出すのも、すべてはその目的のため。それがブレてはいけないんだと思っています。

相性の合う相手となら、正解は自然に降りてくる

幸いなことに、最近私のところに来てくださるお客様とは、初対面から不思議なくらい打ち解けて、こういうの素敵ですよね!という感性が不思議なほど一致することが多いです。

これまでの私の作ったドレスや、競技での私のダンサーとしての姿を見て、そこに何かしら共感してくれた人しかやってこないからなのでしょう。

最初の段階ですごくフィルタリングがうまくされているので、ズレが少なくて済む。これは作り手として、とてもとても幸せなことだなぁと思います。このフィルタリングは非常に大事だと思っているので、これ以上の規模に広げようという気もありません。

感性の合う人となら、お客さんの好みや、こういう風になりたいというイメージ、ダンスを踊っている姿などを見せてもらって、お話をしているうちに、なんとなくデザインの輪郭がちゃんと見えてくるんですよね。

その人自身の魅力、という答えがすでにあって、私はそれを拾い上げて、あるべきところに出すだけ、という感覚。

だから自分でデザインして作っているのだけど、自分のものじゃないような、最初からこれっていう正解があるものを、手探りで探し出していくような感じで、完成するとこれどうやって作ったんだっけ??っていう気分にしばしばなります。

あれこれ考えて、いろいろ試行錯誤して変えたりしたドレスよりも、不思議とそうやって正解をなぞるように作れたものの方が良いものになるんです。

これからどれだけこの仕事が続けられるのかわかりませんが、求めてくれる人がいる限りは、100発100中でそういう「降りてくる」ようなものが作れて、その結果としてお客さんの幸せな体験の一つを提供できるデザイナーでありたいと思っています。

価値を作り出すのは、自分自身の体験から生まれる情熱

今は”モノが売れない時代”だと言います。

モノそのものよりも、その先の素晴らしい体験を、みんなが求めてる

そういうものを作り出すには、自分の中にある体験から生まれるこういう風にしたい!という強い情熱が必要で、そういう血が通ったものにしか価値がなくなっていくのではないかと、最近特に感じています。

ドレスを作れる人もメーカーもたくさんありますが、おそらく、これだけ競技ダンスを踊っていて、自分の着るドレスとダンサーとしての自分へのこだわり(もはや執着かもしれない)を持っているデザイナーはそうそう他にいないはず。

自信を持つ、というのはなかなか難しいことだなあとは思うのですが、そこだけは私の強みだと思って、最大限の価値が提供できるように努力していきたいと思います。

では、今日のところはこのくらいで。早でした!

 

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